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建築家インタビュー#3 マウントフジアーキテクツスタジオ 原田 真宏 / 原田 麻魚

建築設計事務所や建物を訪問し、ファブリックと建築の関係、建築に対する思いなどをお聞きするインタビューシリーズ。

第3回目は、MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIOの原田 真宏さん、原田 麻魚さんです。

建築家の原田 真宏さん、原田 麻魚さんは、設計事務所マウントフジアーキテクツスタジオを率いて約20年。公共施設からホテル、住宅まで、ダイナミックでありながら環境と対話した心地よい空間のプロジェクトを多数手がけていらっしゃいます。

今回は、約10年前にお二人が設計され、クリエーションバウマンのファブリックもご採用いただいた『Shore House / 海辺の家』でお話をお伺いしました。

いたるところから海と山を眺めることができる静かな港町。まさに自然や物、建築、人の対話関係が心地よく、無理なく自然体でいられる空間でした。

Shore houseについてはもちろん、建築におけるファブリックの役割、建築家を目指したきっかけ、クリエーションバウマンの本拠地スイスのことまで、多岐にわたるお話を約7分に凝縮して編集したインタビューです。真宏さん、麻魚さんお二人の魅力満載です。ぜひ最後までご覧ください。

インタビューの場所、Shore House/ 海辺の家について

ヒルトップなんですよね。海だけじゃなくて山にも開けてて。
この場所のインスピレーションはすごい大きかったなって思いますね。(麻魚)

色々な国でバラバラに暮らしてる家族が、いずれ帰ってきたくなるような場所が欲しいっていうリクエストが一番印象に残っている。(真宏)

そうね、その時に、方向というか、私たちがやるべきことみたいなのが、見えたかなって思いますね。友達とか家族とかがみんなで集まって楽しめる場所。そういう気持ちのいい場所。(麻魚)

お施主様の趣味でもあったビーチコーミングもヒントになった。色んな由来の色んなところから来た色んなモノたちみたいなのが、あるところに集まっていい関係になってる。この建物に関しても、色んなところから来たものが、それぞれ自然な関係になる。対話関係があるような、ものの組み合わせ方、空間との関係みたいなものを作ることで、居たいようにその場所に居ながら、他の人との関係を築けるビーチコーミングのような建築。(真宏)

10年以上経ってだいぶ経年変化なんかしてきてるのでそれがすごくいいなって。鉄は鉄のまま、木は木のまま使っているので、当然自然の風にさらされたり、時間と共に変化しているんですけど、良い変化をしているなって感じました。(麻魚)

外から来たものとか、近くから来たものとか、工業的なものとか、人工的なものとか。そういうのが関係なく、それぞれがなりたいように、いたいように関係を結んでいる。自然地形との関係とか、風景との関係とか、そういう関係も鉄と木の関係と同じように紡がれていっているから、自分なりの場所を皆見つけて、無理なく始めて来た人もリラックスして自分の居場所を見つける。(真宏)

ファブリックを建築に取り入れる

建築は動かない、カーテンは動くっていうの結構大きいなと思っていて。永遠に在るというか、建築って長寿命なものですよね。

そういう人間の時間のスケールを超えているようなところがあり、人と建築の間のちょっと時間的な断絶みたいなものが生まれやすいんですけど、カーテンはその間を取り持ってくれる。

儚い存在の人間と永遠にある建築の間にいてくれるっていうところがあって、それが僕はこういうファブリックというかカーテンを建築に取り入れるときのありがたいところだなと思っている。

カーテンがそこにあると、光と影がそこの面に現れてくれるから光を分かるようにしてくれたりとか。あるいは風の形を分かるようにしてくれたりとか、そういう見えない自然の要素みたいなものを可視化してくれるような役割があるのはすごく大きいと思う。(真宏)

私はね、カーテンってまあそんなに好きじゃなかったんですよ。で、ファブリックっていう風に言っていて、カーテンっていうのはある住宅用の視線を遮るためのものとか光を遮る役割を与えられてるような雰囲気があるんですけど、ファブリックって言うと木とか鉄、布ぐらいのガラスぐらいの一つの存在としてこの対話関係の中に取り入れる素材になってくる。

バウマンの生地はファブリック感が残ってて、建築の一部として対話する相手として取り入れることができるようになった。それは本当ありがたいことで、登場人物が増えてくるっていう豊かさにもつながってるなっていう風に思いますね。(麻魚)
« カーテンは、光を分かるようにしてくれたり、風の形をわかるようにしてくれたり、儚い存在の人間と永遠にある建築の間にいてくれるっていうところがあって。 »
BY 原田 真宏

クリエーション バウマンについて

こちらが求めている美的な世界観を、感度高く汲み取ってくれるというのが嬉しいなと思います。建築のコンセプトになったビーチコーミング、対話関係の中身に入ってきてくれる人たち、グループという感じがしますね。(真宏)

縫製とか色々話を聞いてくれて、こうしたいみたいな要望を言っても、制度的に無理みたいなことは聞いたことがなくて、それはすごく同じ目線に立って『ものづくり』をしている仲間という風に私を思わせてくれます。裾の折り返しを最小限にしてもらうことで、窓のエッジが見えてくるようになったりとか。どんどん相談したくなるっていう。(麻魚)

この空間に対しては、このくらいの折り返しがいいとか、このくらいのドレープのヒダ感がいいとか、そういう調整ができるから、周りのものとの応答ができるんですよね。感度高いよね、人が。現場の切った貼ったの世界とはちょっと違って、そこに暮らしていく人たちの求める資質みたいなものを理解した上で振る舞ってくれて。(真宏)

《ファブリックのものとしての良さ、フィーリングをこちら側に与えてくれるっていう豊かさがあるなと思いますね。機能のためだけで選ばないで済むのがすごく楽しいですね。》
BY 原田 麻魚

設計の仕事を志すようになったきっかけは?

自分が住んでいる世界が美しくあってほしい。自分のいる環境を作る事ができる職業として、建築家がいいなと思ったんでしょうね。きっと。(真宏)

私は父がパラボラアンテナの設計者で、製図台とか鳥の羽で消しゴムをはらうのとか、そういう空気を持った一室があってかっこいいなと思っていたし、机を作ったり、色々なことをさせてもらっていたので、すごく自然な流れで建築家という職業がダイナミックに自分に近づいてきた。今もずっと楽しんでいる。建築家になる前から建築家みたいな感じだったんだと思いますね。きっと、建築家という職業がなかったとしても、建築家として生きているんじゃないかなって気がしますね。(麻魚)

建築する上で影響をうけていることは?

建築そのものや建築家からの影響っていうよりも、その外側の世界からの影響は大きいかもしれないね。
組み立てられた世界観みたいなもので、これすごい建築だなと思ったりするようなものには割と触れていて、例えばいつか作りたいなと思ってる世界観としては、森鴎外の高瀬舟っていう小説の構築的で叙情的で透明で、ああいう建築を作りたいなって思ってプロジェクトに取り組んだりすることもある。

休日の過ごし方は?

僕は最近はね植物にハマってますね。お庭にどの木を植えるかとか、土を変えるかとか。小さな命が愛おしくて仕方がない。

最近は山の家に行って雑草刈ったりとか、家のメンテナンスをしたりとか。クッタクタになるんだけれど、一日がその筋肉の疲れとかで世界と対話した感の充実感がある。(真宏)

私は山を歩いたり。ずっと歩いているとしんどいんですけど、誰も介錯してない状況に没頭して入ってしまうみたいなのがすごく好きで、たまにそういうすごくフィジカルとギリギリの自分を成り立たせるための規制みたいなものがせめぎ合うみたいな状況がすごく好きです。
それを理解するためのなんか分析したような本とかも結構好きだし、それを理解するためのなんか科学雑誌に乗ってくるような背景みたいなのやっぱり好きです。(麻魚)

 

 

 

 

 

【原田 麻魚】
1976
神奈川県生まれ
1999
芝浦工業大学建築学科卒業
2000-2003
建築都市ワークショップ所属
2004
原田真宏と共に「MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO」設立
2013-2014
東北大学 工学部建築・社会環境工学科 非常勤講師
2019-2021
東京大学 工学部 建築学科 非常勤講師
2022-
東京理科大学 工学研究科 建築学専攻 非常勤講師
2022-
早稲田大学 建築学科 非常勤講師

 

 

 

 

 

【原田 真宏】
1973
静岡県生まれ
1997
芝浦工業大学大学院建設工学専攻修了(三井所清典研究室)
1997-2000
隈研吾建築都市設計事務所
2001-2002
文化庁芸術家海外派遣研修員制度を受けホセ・アントニオ & エリアス・トーレス アーキテクツ(バルセロナ)に所属
2003
磯崎新アトリエ
2004
原田麻魚と共に「MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO」 設立
2005-2006
慶應義塾大学 COE特別講師
2007
芝浦工業大学 工学部建築学科 非常勤講師
2007
慶應義塾大学 理工学部システムデザイン工学科 非常勤講師
2008-2016
芝浦工業大学 工学部建築学科 准教授
2014
東京大学 工学部建築学科 非常勤講師
2015
東北大学 工学部建築・社会環境工学科 非常勤講師
2016
芝浦工業大学 工学部建築学科 教授
2017-
芝浦工業大学 建築学部建築学科 教授

◆マウンントフジアーキテクツスタジオは数々の賞を受賞されています。

主な受賞歴

2022 第32回 AACA賞 優秀賞「Entô」

2022 第14回JIA中国建築大賞「A&A LIAM FUJI」

2022 ICONIC AWARD 2022「松栄山仙行寺」

2020 2020年日本建築学会賞(作品)「道の駅ましこ」

2019 第14回日本構造デザイン賞「道の駅ましこ」

2018 第59回 BCS賞受賞「道の駅ましこ」

2018 2017年度JIA日本建築大賞「道の駅ましこ」

2015 第25回 AACA賞 芦原義信賞「Seto」 など多数