室内の話し声や電子音などのノイズなどは、生活の多くの場面で不快感を与えます。これは、日常生活でも職場においても見られることです。学校の教室で勉強の成果が上がらない、会社で業務の効率が上がらないなどの要因として、音環境の不備が関係していることがしばしばあります。
私達クリエーションバウマンは、世界で初めて音をコントロールする生地を開発したメーカーです。あらゆる音の悩みを解決するために研究を重ねています。
室内の音環境を整えるには「吸音」と「防音・遮音」が大切です。吸音とは、室内の残響音をコントロールすることを意味し、この残響音が空間の音環境そのものに多大な影響を与えます。また防音・遮音とは、好ましくない騒音などを室内に入れない・出さないことを意味します。ここではまず、音に対する理解を深めていただきます。その後、防音・遮音について説明します。
※吸音については、こちらの解説をご覧ください
1. 音と音圧
音には、調和音・衝撃音・騒音・雑音・音楽など、さまざまなものがあります。また、話し言葉も音のひとつです。これらの音はいずれもわずかな気圧変動を起こすことで、周囲に伝わります。
音・騒音・音声・音楽などのレベルを音圧で表すのはそのためです。音が大きいほどこの気圧変動が大きくなり、それに伴って音圧が高くなります。
また、音は空間の三方向すべてに伝わります。音は空気の波となり、全方向にほぼ均一に放射します。また、音源からの距離が遠くなるにつれて、この音波は減衰します。音が壁などを通過する場合は、壁の振動に変換されます。そして、この壁の振動が室内の空気を振動させ、音として室内に放射されます。
音の感じ方は主観的な側面が強いため、好ましくない音は騒音と呼ばれることもあります。コンサートでの音楽や話し手の声、交通騒音や近隣からの音楽など、好ましい音と好ましくない音の相違が論じられるのはこのためです。
音圧とは
音が引き起こす気圧変動のレベルは音圧で示されます。人間が知覚できる最小の音圧は約20μPa(20マイクロパスカル) = 0.00002パスカルという非常に小さな値で、これは人間の聴覚系が高感度であることを示しています。
また、20Pa(20パスカル)という高いレベルの音圧にさらされると、ごく短時間であっても聴覚系が損傷してしまいます。
音圧レベル(uPa)とデシベル(dB)
人間が聞き取れる最小の音圧20マイクロパスカル(uPa)は、100万分の20パスカル(Pa)という意味です。耳をつんざくような大音量は約20パスカルとなります。音圧をマイクロパスカルとパスカルで表現すると、100万倍の範囲を扱うことになり、桁が多すぎて不便です。
そこで、音圧を測るにはデシベル(dB)という単位を用います。
2. 建築音響における防音・遮音性能の影響
建築音響は、建築材料などが持つ防音・遮音性能に大きく影響を受けます。遮音性能とは、壁・天井・ドア・窓などが持つ、ふたつの空間を透過する音を最小限に抑える能力です。通常、堅く重い素材を使用することで、高い防音・遮音性能が得られます。
3. 建築家にとって最適な音環境の実現
インテリアデザインの質を高め、室内外への音の出入りを防ぎ、同時に室内の残響時間をコントロールする画期的なソリューションがあります。
空間は広ければ広いほど、歩き回るスペースがあればあるほど、創造性が高まります。特にオープンスペースは、設計自由度の高い新たな空間をもたらします。
しかし、オープンが故に周囲の音が騒音となり、防音・遮音が必要な場合が生まれます。また、ガラスやコンクリートなどの滑らかな表面は残響音を高めてしまうので、吸音も必要となります。公共空間や自宅での騒音や残響音は、人の精神面からもコントロールされなければなりません。
この課題を解決するため、クリエーションバウマンは、吸音と同時に防音・遮音を実現するカーテン「Acoustic Divider Vario」を開発しました。
「Acoustic Divider Vario」を間仕切りに用いた実用例
「Acoustic Divider Vario」は、独自に開発したノイズサイレンサーを二層にすることで、最大16dBの音を遮断することができます。ノイズサイレンサーの両面を吸音効果の高いファブリックと一体化させることで、室内の残響時間を短くすることができます。即ち、室内への音の侵入 あるいは 室外からの音の侵出を防ぐことができ、室内の音の静寂さを実現することができます。
分厚い壁やパーティションで空間を間仕切ると音を遮断することはできますが、その反面 残響時間が長くなり、結果として室内の音環境を劣化させます。また、レイアウトを固定させてしまいます。「Acoustic Divider Vario」を用いることで、音環境の品質を高めることができ、かつ 曲線を含めた自由な空間のレイアウトを可能にします。
【内側:音響的に静かなスペース】
アイデアを出すために集中したい、静かな環境で電話をしたい、生産的な会議を行いたい。
静かなエリアを作りたいなら、それはACOUSTIC DIVIDER VARIO(アコースティック・ディバイダー・バリオ)で実現することが可能です。
【外側:高い騒音のあるスペース】
間仕切りのないオフィスなど、多数の人がコミュニケーションを行う場所では、騒音レベルが高くなりがちです。
ACOUSTIC DIVIDER VARIO(アコースティック・ディバイダー・バリオ)は、こうした場所に最適な防音・遮音性能を発揮するカーテン生地です。
4.「Acoustic Divider Vario」の特徴
これまで騒音に気を遣いながら空間を設計するには、大がかリで費用のかさむ工事が行われてきました。クリエーションバウマンが生み出した防音・遮音カーテンは、コスト効率が高く、室内の音環境を効果的・柔軟、かつ 魅力的に整えることができます。
「Acoustic Divider Vario」は、表裏2枚に吸音生地を使用します。その2枚の生地の間に、モルトン材を特殊フィルムでコーティングしたノイズサイレンサーを、1枚または2枚挟んでいます。この構造により、効果的な防音・遮音が可能になります。ノイズサイレンサー付きの防音・遮音カーテン「Acoustic Divider Vario」なら、空間の中に簡単に静かなエリアを作り出し、騒音を最大16dBまで抑えることが可能になります。
下の図で、音響効果を実現する間仕切りの構造を説明します。
【ノイズサイレンサー付き ACOUSTIC DIVIDER VARIOの構造】
(1)第1層:表面の吸音ファブリック
床上がり1cm、または床に垂らすことを推奨しています。
標準でサイドに黒のパイピングが付きます。
(2)第2層〜第3層:ノイズサイレンサー
裾の汚れ防止にもなる黒い保護用ストリップが付きます。床面と同じ高さを推奨しています。
(3)第4層:裏面の吸音ファブリック
床上がり1cm、または床に垂らすことを推奨しています。
標準でサイドに黒のパイピングが付きます。
オプション:ハンドル
カーテンを簡単に開閉できるハンドルもご用意しています。
より高い防音・遮音効果を得るために:
上部にヒダの山を作らないフラットなカーテン仕様を推奨しています。また、丈は床より約1cm上がり、または床に垂らすことを推奨します。カーテン幅はレールの長さに対し、約1.2倍程度を推奨しています。
ISO/DINEN規格の厳正なテストによる吸音・防音・遮音性能を、スイスにて検証
「Acoustic Divider Vario」に推奨する下記の5種類の吸音カーテン生地について、ISO15186-1(音響透過損失)、ISO354・ISO11654(吸音)、DINEN29053・ISO9053(流れ抵抗)に基づいた各種テストを実施し、その効果を検証しています。
また、様々な吸音カーテンとの組合わせにおける減音率を計算するシュミレーションシステムを、スイスのルツェルン工科大学と協同開発しました。
3層のACOUSTIC DIVIDER VARIO:
ノイズサイレンサー1層を挟んだ場合の測定値は、11-14dBの減音を示しています。
4層のACOUSTIC DIVIDER VARIO:
ノイズサイレンサー2層を挟んだ場合の測定値は、14-16dBの減音を示しています。
防音・遮音試験結果の詳細データは、こちらからご覧ください(PDF形式/英語表記)。
5.「Acoustic Divider Vario」での使用を推奨する5つの防音・遮音カーテン生地
「Acoustic Divider Vario」の表と裏に使う防音・遮音カーテン生地として、最適な5アイテムを紹介します。
【推奨生地1】ARNO(アルノ)
難燃性のあるトレビラCSの糸を使用したマルチカラーの斜子織りによる、椅子張りとしても使えるファブリックです。しっかりとした織りによって弾力が生まれ、また複数の色合いが表面に見えるように縦糸と横糸を配しています。
エレガントなカラーリングと柔らかく自然な感触が特徴です。
このカーテンの吸音率 (アルファ ヴェー)はαw 0.90です。
⇒ 防音・遮音カーテン生地紹介「ARNO(アルノ)」へ
【推奨生地2】PHANTOM PLUS Ⅱ(ファントム プラス)
幅310 cmの表裏が同色の遮光ファブリックです。サテン織りで、上品な美しい光沢があります。ツルンとした心地よい感触で流れるような遮光ファブリックです。
グレー~ベージュなどの豊富なニュートラルカラーに加えて、ピンク~オレンジ、ブルー~グリーン系などのアクセントカラーも取り揃えています。
このカーテンの吸音率 αw(アルファ ヴェー)はαw 0.60です。
⇒ 防音・遮音カーテン生地紹介「PHANTOM PLUS Ⅱ(ファントム プラス)」へ
【推奨生地3】SECRET(シークレット)
今までになかった、リネンのような質感の新しい遮光生地です。淡い色目のマットな質感で、柔らかな肌触りが特徴です。片面はサテン織りのような滑らかさです。使いやすいベージュからグレーまで微妙なトーン違いを数色ご用意し、様々なニーズにお応えします。
このカーテンの吸音率 αw(アルファ ヴェー)は、αw 0.85です。
⇒ 防音・遮音カーテン生地紹介「SECRET(シークレット)」へ
【推奨生地4】ALEX(アレックス)
難燃性のトレビラCSを使用した、重厚で耐久性のある斜子織りの椅子張りとしても使えるファブリックです。定番カラーから現代的な色まで多彩な50色のカラーパレットをご用意しています。
3色をクロス染めしているため、ソフトライトトーンからダークトーンまで、幅広い色調からお選びいただけます。
このカーテンの吸音率 αw(アルファ ヴェー)はαw 0.80です。
⇒ 防音・遮音カーテン生地紹介「ALEX(アレックス)」へ
【推奨生地5】SPORT(スポルト)
多種多様な用途に利用でき、しっかりと視線を遮ってくれる、ベーシックなドレープ生地です。
マットな糸を使った二重織りの平織りで、ざらっとした感触のドライでマットな表面を作りあげています。
このカーテンの吸音率 αw(アルファ ヴェー)はαw 0.80です。
⇒ 防音・遮音カーテン生地紹介「SPORT(スポルト)」へ
6.「Acoustic Divider Vario」活用事例
私達の吸音・防音・遮音カーテン「Acoustic Divider Vario」は、様々な空間で活用されています。納品事例をこ紹介します。
【事例1】病院/クリニック納品事例『MDC Loft – ベルリン』
MDC Loft(ベルリン)は、歴史ある広場を見下ろせる歴史的な魅力を残す最上階の広いロフト空間です。板張りの床と石膏ボードの天井を持つ、部分的に改装された古い建物で、広々とした空間を2つの独立したトリートメントサロンに変えることが課題でした。
それぞれの空間がプライバシーを保ち静かでリラックスできる雰囲気となるよう、吸音カーテン「LORD Ⅲ(ロード)」、「SPORT Ⅱ(スポルト)」、遮音材ノイズブロッカー付きの「ACOUSTIC DIVIDER VARIO(アコースティック・ディバイダー・バリオ)」が音響的に部屋を分けるために使用されています。
さらにカラースキームはカナリアの鮮やかな色からインスピレーションを得ました。これにより、爽やかで生き生きとした雰囲気の空間となりました。
⇒ 事例紹介「MDC Loft – ベルリン」へ
【事例2】オフィス/教育施設/公共施設/学校/美術館カーテン納品事例『SHOPLAB – Oberentfelden』
ストアメーカーであるUmdasch Shopfittingの学際的な中核的研究拠点である「SHOPLAB」は、セミナーやワークショップを開催できるスペースも含むオープンプランの室内構造で成功を収めています。
この施設では、セミナーのために静かな環境を作れるよう、遮音効果のある音響カーテンを探していました。
オープンスペースのデザインの中で「Acoustic Divider Vario(アコースティック・ディバイダー・バリオ)」を「TONY(トニー)」と併せて使用し、料理のワークショップも集中して行う会議も、すべて同時に行えるようにしたのです。
特別なカラーのこのカーテンはアイキャッチャーとなり、この部屋の構成における重要な要素となっています。
⇒ 事例紹介「SHOPLAB – Oberentfelden」へ
【事例3】ホテル / レストラン / 介護施設カーテン納品事例『Boundary Shoreditch – London』
イースト・ロンドンのビクトリア朝の倉庫を改装したBoundary Shoreditch(バウンダリー・ショーディッチ)は、ブティックホテルで、2つのレストラン、バー、イベントスペースからなる多用途な施設です。
プライベートダイニングエリアのある豪華なバーを併設しており、吸音・遮音カーテン「ACOUSTIC DIVIDER VARIO(アコースティック・ディバイダー・バリオ)」は、視覚と音響の分離として採用されました。
遮音カーテンには、外側は「LANO(ラノ)」、内側は「PHANTOM PLUS Ⅱ(ファントム プラス)」の繊細な光沢が、快適な雰囲気を作り出しています。
⇒ 事例紹介「Boundary Shoreditch – London」へ
【事例4】教育施設/公共施設/学校/美術館 採用事例『KOSMOS – Zurich』
チューリッヒのKosmosは、新たなカルチャースポットとしておしゃべりや議論を分かち合う場所です。ステージ、ブックサロン、シネマ、ビストロ、バーが、一つのオープンな構造の中で存在しています。カーテンを用いることで、落ち着いた建物とのコントラストを生み出し、カラフルな仕掛けの役割を果たし、個々のエリアを関連付けています。その一方で、音の環境では課題がありました。
防音・遮音効果のある「Acoustic Divider Vario」は、ウールのような素材の吸音カーテン「CALVARO(カルバロ)」を併せて使用しています。これにより、必要に応じてオープンエリアを分割することができます。また、理想的な音体験を実現するため、6ヵ所のシネマホールには、吸音効果に優れた定番の「UMBRIA(ウンブリア)」のブラックを用いて壁を完全に覆っています。
⇒ 事例紹介「KOSMOS – Zurich」へ