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建築家インタビュー 建築とファブリック#2 畝森 泰行

設計事務所インタビューシリーズ。第2回目は、畝森泰行建築設計事務所の畝森泰行さんです。

クリエーションバウマンのファブリックを採用頂いた建築設計事務所や建物を訪問し、ファブリックと建築、建築に対する思いなどをお聞きするインタビューシリーズです。

第2回目は、畝森泰行建築設計事務所の畝森 泰行さんです。

今回は畝森 泰行さんが設計された須賀川市民交流センターtetteにてインタビューさせて頂きました。

畝森 泰行 Hiroyuki Unemori

1979年岡山県生まれ。1999年米子工業高等専門学校卒業。2005年横浜国立大学大学院修士課程修了。2002−09年西沢大良建築設計事務所勤務。2009年畝森泰行建築設計事務所設立。主な受賞にBCS賞、JIA優秀建築賞、日本建築学会作品選奨、新建築賞など。主な作品に「Small House」(2010)、「須賀川市民交流センターtette」(2019、石本建築事務所と共同)、北上市保健・子育て支援複合施設hoKko(2021、tecoと共同)、「Houses」(2022)など。

東日本大震災の復興事業として生まれた複合施設『 須賀川市民交流センター 』に機能性ファブリックを採用
最初ここへ来たときは、まだこの建物を建てる前で、人がほとんど歩いていないような震災後の寂しい町だったんです。

この施設を作るからには、ここで起こる出来事や人の姿が周りから見えることによって、町の人たちを元気付けられると良いなと思ったので、開放感、あるいは町との連続性とかを意識して設計しました。

この建物自体に色々な人が関わってほしいし、自由に入って来れるような施設にしたいと思ったんです。

建物はどうしても固いもので作られるので、人と建物(建築)の間になるような、そういう柔らかな存在が『ファブリック』だなと思ったんですよ。それでなるべくファブリックを使っています。

カーテンが色々なところにあるのは、結構良いという声を聞きますね。固定されていないというか。光が柔らかく入るだけじゃなく、そこに薄いカーテンがあることで、 人が動いたりとか、風が建物の中に入ってきた様子が、カーテンが動くことでわかる。

「自然を感じられるのが良いね」という話も聞きます。

講演会や映画上映などスクリーン、プロジェクターを使用する1Fのホールに大胆にファブリックの間仕切りを設置
高さは約8メートルぐらいだったと思います。「屋根のある街路」のようなそういう場所です。
これだけの高さを仕切るのは、なかなか難しいんですけど、カーテンだと人の手でこんなに高くても簡単に仕切れるし、仕切っているけれど、歩いている人の様子とか声が聞こえてくる。
町の中にいるんだけど、自分たちの居場所ができるみたいな。カーテンで簡単に仕切れる場所が一つ選択肢にあるのは良かったんじゃないかなと思います。

 

 

ファブリックを採用するに至るまでのプロセスを、施設や市民の皆さんへどのように説明されたのですか?
例えば住宅でも、カーテンやファブリックは身近な存在でもあるので、よく使われますよね。 公共施設は、とても大きいけれど住宅のように使いやすくてかつ 変化が生まれるような、そういう理由でファブリックは良いんじゃないかという話をしました。

これだけの面積や量のカーテンを公共施設ではなかなか使えないと思いますが、クリエーションバウマンのカーテンは機能がかなり特化しているので、例えば吸音性であるとか、紫外線の遮断や遮熱性とか、それでいて透過性があるとか、その多機能さはこの施設にとってすごく大事だったんですね。

吸音しつつも外の様子が見れたり、日射を遮りつつも町の景色が見えるとか、そういうことは大事だよねということを、施設の人といろいろコミュニケーションを取りながら、クリエーションバウマンのカーテンが良いんじゃないかという話をしました。

«建築の強さと、人間の柔らかさの間というか。建築が変わらないものであるなか、人間は環境や気分、感じ方で変わるじゃないですか。その間にちょうど入るものがファブリックなんだろうなと。 その人の状況とか天気、季節とか、そういうものに応じて開閉できるファブリックがあるのは、動かない宿命を持つ建築にとってすごく良いなと思いますね。»
by 畝森 泰行

建築という仕事をする上で、普段どういう事を意識的していますか?

人の様子を見ているかもしれないですね。あとは自然や公園なども結構好きです。公園も様々だと思うんですけど、いろいろなことが生まれている公園、みんなが自由にしていられるような公園が好きですね。

楽器を演奏している人がいたり、体操している人、子供がシャボン玉を吹いていたり、ランニングしていたり、そういういろいろなことが生まれる場所はいいなと思って、そういうところは快適で、よく行くかもしれないです。

 

 

須賀川のこの場所も、1階はスロープ状になっているんですけど、そこでコーヒーを飲めたり、待ち合わせをしたり、勉強している子や、2階に上がるスロープを走ってる子供がいたり、おばあちゃんが散歩していたりとか、いろいろなことが起こる。

でも一つの空間のなかでも、気にならないと言うか、「そういう色々な人がいることが当然だよね」と思える気がして。そういう建築ができるといいなと思っていますし、そんな場所を見つけたり、身を置くことを、意識しているかもしれないです。

僕が育った場所で言うと、原っぱや田んぼのあぜ道みたいなところ。ああいう場所が子供の頃大事でした。何をやっても良いような。自然のなかだから、自分の領域がどこまでも広がっていくような感じ。 そういう自然な建築が出来れば良いなと思っています。

人が集まれるのが実空間・建築の醍醐味

スロープで上に行って、そこから見下ろしたり、下からも見上げたりできて、一番高低差を感じる場所なんですよね。

自分をこう相対化・客観視できるような瞬間は大事なと思っています。全然違う場所から、自分がさっきいた場所を見れる、そういう場所がいっぱいあるといいなと思います。

それは建築の可能性というか、あるいは建築らしさでもある。先程の公園の話もそうですけど、いろいろな人が集まれるのが実空間・建築の醍醐味な気がします。

今、SNSなど発達していて、自分の興味の中だけで世界が終わってしまいそうなんだけど、こういうオープンな形の建築空間があれば、知らない人が通り過ぎたりとか集まってきたり、見たり見られたりする。
それは、リアルな空間ができる価値というか可能性なのかなと思います。そういうのは建築をやってて良かった、面白いなと思います。

建築にカーテンを採用する事のメリット

「選択肢が多い」というのはまずありますね。透過性の度合いも、吸音の仕方も色々あるし、しかも開け閉めもできる。ガラスフィルムを貼るとそれで完結してしまうし、しかも透明なフィルムだと貼ってたかどうかすらもう覚えていないこともある。

それに比べてカーテンは、選択肢や変化があるというのは特徴ですね。

あと、この建築自体が、四角い形が多いので硬いんです。やっぱり柔らかな印象にしたいと思いました。

何となくこの先に自分たちが住んでいる町を感じられることが大事で、それはやっぱりブラインドやフィルムを貼ることではない。そこがカーテンを選んだ理由なのかなと思います。

例えばここは、ただの駐車場ですよね。だけど、それも大事というか。壁にすることは簡単だけど、このただの駐車場かもしれない先に、お寺が見えて、向こうの緑が見えたり、そういうものがちゃんと見えるのは大事だなと思います。

フィルターというかレイヤーがあるような。例えばこれは服と一緒だと思うんです。

服があることによって、他者というか、他の人と接することができたり、快適さを持つのと一緒で、建物もガラスの手前にカーテンがあることで、町との距離が多少生まれます。それが結果として、町を近くに感じられるような、そういう効果がある気がします。

«この建物をどんどん上に上がっていくと、町を見下ろすような感じになります。そして、中を歩いていくと、室内のいろいろな場所が見えると同時に、視線の先に町の風景が見えて、常に「町と自分たちの場所がセットで感じられる」。 だから、遮光や遮熱は必要だけれども、やはりそこに透過性があることは大事なんだと思います。»
by 畝森 泰行

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